鬼頭立子 タイル画作品
<月下航路>
満月の下
航行する帆船を誘うのは
クロタネ草( Love in a mist )
幻想的な花の姿や宇宙人似の実の形
姿を変えては現れて船を導く陽気な水先案内人
海は穏やか
心配はいらない
楽しげに並泳する魚たちと一緒に
月に照らされた海路を進もう
<青庭園>
「静」のイメージを持つブルー
それ故なのか
耳を澄ますと
鳥の羽ばたきやさえずり
葉擦れの音さえも聞こえきそう
感じられるのは静寂の中の躍動感
<エーゲの岸辺>
アーティチョークが空に向かって力強く伸び
勇気を与える青い瑠璃ジサが咲く
新しい命が生まれ躍動するエーゲの岸辺
フラミンゴの雛たちが翼を広げて
大空へ飛び立つその時まで
見守り
恵みを与え続けてくれる
<水辺で>
四季の風物を好む日本では
清流に白い鷺草が咲く様は美しい夏の原風景
常春を愛するオスマン朝では
季節を超えて満開の春の花々が描かれた
日本人の描くトルコタイルでは
春のチューリップと夏の鷺草が
隣り合わせで水辺に揺れている
<豊穣のトルコ>
トルコ南東部に自生する逆さチューリップの下
澄まして並んでいるのは
トルコ原産ヴァン猫とスルタン鶏
イズニック陶器に盛られた瑞々しい果物は
ここで収穫され世界へ送り出されていく
なんと豊かな!
豊穣のトルコ!
<麒麟と鳳凰>
優しく穏やかで
植物や小さな虫すら傷つけない麒麟
慈悲に満ち
叡智を備えた鳳凰
どちらも
仁や徳のある為政者が治める平和な世にのみ
吉祥の前兆として現れるという
今
麒麟が駆け
鳳凰が舞い降りる地があるのでしょうか?
<かくれんぼ>
ある初夏の昼下がり
カメレオンたちが
浦島草の間でかくれんぼ
そ~っと そっと近づいたのに
風がスズランの花を揺らす
あっ 見つかった!
鬼頭立子(キトウ リュウコ)
略歴
1970
三重県生まれ
1993
三重大学人文学部文化学科
アジアオセアニア文化コース卒業
1993-2002
株式会社商船三井勤務
2007
トプカプ宮殿
バグダット・キオスク修復
2007-2009
アヤソフィア マフムート1世図書館
装飾タイル模写
2010
トルコ国立ミマル・シナン芸術大学
芸術学部伝統トルコ芸術学科
装飾タイルコース卒業
出展歴
2008
“Geçmişten Günümüze Geleneksel Sanatları”
ミマル・シナン芸術大学/イスタンブル
2010
“Çini Bahçesinde Nevbahar”
ベイオール・アートギャラリー/イスタンブル
2015
“ERGUVAN İSTANBUL”
マルマラ大学アートギャラリー/イスタンブル
巡回展:タタールスタン共和国/カザン
2018
“Yeditepe Bienali -KARMA ÇİNİ SERGİSİ-”
ヌルオスマニエ・モスク 地下倉庫展示会場/イスタンブル
“DÜN KÂŞİ-EVÂNİ,BUGÜN ÇİNİ SERGİSİ”
メフメット・アキフ・エルソイ芸術センター/イスタンブル
受賞歴
2010
サークップ・サバンジュ賞 受賞/トルコ
2014
伝統芸術コンペティション
“Geleceğin Ustaları 2”
タイル部門 1位入賞/トルコ
2015
古典芸術コンペティション
“7tepe 7sanat” タイル部門
3位入賞/トルコ
2016
伝統芸術コンペティション
“Geleceğin Ustaları 4”
タイル部門 入選/トルコ