ご挨拶

ご挨拶

トルコで、建築の壁面を美しく彩る装飾タイルのことを「チニ/Çini」と言います。

イズニックに代表される16世紀のチニは、白い素焼きの陶板に顔料で絵付けをした後、上に透明釉薬をかけて焼く「下絵付け」と呼ばれる技法で描かれます。

1.絵付け
2.釉薬掛け
3.焼成

900℃以上の焼成によって溶けた透明釉薬はガラス質の膜となって絵を覆い、顔料は美しく発色します。

素焼きの陶板には石英(クォーツ)が配合されており、タシュ・チニ(石タイル)ではおよそ80%以上もの比率で石英を含んでいます。

石英
タシュ・チニと原料の粉末

この石英という鉱物は二酸化ケイ素 (SiO₂)の結晶で、その中でも特に結晶の形が明瞭なもの(自形結晶)は水晶と呼ばれます。

この陶板に描かれた絵が、ガラスで閉じ込められる。
描かれた世界は色褪せることのない、ガラスの膜で隔てられた向こう側の世界となる。

ヒュッレム・スルタン廟(1559)/イスタンブル

この特異性とチニ独特の深く鮮やかな発色が、私がタイルを建築資材ではなく画材という視点で捉え、その面白さと可能性を感じている大きな理由になっているのではないかと思います。

又、チニのデザインはイスラム美術や中国美術にオスマン朝独自の要素が加わり、それらが見事に溶け合って生み出される不思議な魅力に溢れています。

チニのデザインを学ぶ為にトルコに渡り、多くの方に支えられながら10余年という歳月を、イスタンブルで装飾タイルに囲まれて過ごすことができました。
この経験をアトリエでの活動に繋げて行ければと思います。

アトリエ チニチニ
窪田有美子